鮭川村では旧暦の桃の節句に合わせてくじら餅が作られてきましたが、今ではだいぶ作る人は減ってしまいました。鮭川村の食生活改善推進協議会では毎年子ども向けのくじら餅教室を開催していますが、米地区でもここ2年、「くじら餅体験教室」を開催してきました。
<粉ひき>
以前は、鮭川村にも米の粉を挽いてくれる所が何カ所もあったようですが、今、挽いているところはごく僅かになってしまいました。季節になると粉ひきを続けてきた下牛潜の阿部さんによると10年ぐらい前までは牛潜周辺の世帯の半数、40軒ほどは粉を挽いてくじら餅を作っていたものの、今はせいぜい10軒ほどに減ってしまったということでした。また以前は村から出て行った人にもよく送ったそうですが、今では村外で生まれ育った人は食べなくなり、送る人も減ってしまったと言います。(写真・聞き取り2012年)
<うるかす>
くじら餅に利用するお米は3日間ほど浸水し、「うるかします」。(うるかす=水に漬けてふやかす)その後水を切って、一晩広げて乾かし、それから製粉所で粉にしてもらいました。
湿った粉はカビが生えやすく保管が難しいとのことです。(うるかしたあとのお米を袋にいれて脱水機にかけるという方法もあります)
今は乾燥したまま挽いてくれる製粉所もあるのですが、これまでの分量と変わってくるなど、少し難しいところもあるようです。
<家ごとに異なる味>
くじら餅に使う粉はもち米とうるち米の混合です。米地区では8対2(もち米が8)が多いようですが、もち米100%から6対4ぐらいまで、様々だといいます。8:2〜7:3が一般的なようです。また味付けも、黒砂糖や、黒砂糖と醤油、白砂糖とザラメとみそ、白砂糖のみ、あんこなど、それぞれの家の味があります。
<蒸し器>
くじら餅には専用の蒸し器が利用されています。現在利用されている蒸し器は金属製で、金属製のくじら餅の型9本がきれいに入るようにできています。
それ以前は木製のくじら餅専用蒸し器がありました。写真の蒸し器は40年ぐらい前まで利用していたといいますので、100年ぐらいは経っていると思われます。内側の可動式の木の枠に布をかけ、直接練った粉を流し込んだそうです。焼き印で重ね順が記されています。
ここでは米地区での黒砂糖・醤油味を紹介します。
<練り>
蒸す前日に粉を練ります。
1) お湯を沸かし、黒砂糖と醤油を入れてとかします。焦げ付かないように、また砂糖の塊が残らないように気をつけます。
2) 粗熱が取れたら、粉を入れていきます。ダマが残らないように丁寧に粉を混ぜ、トロトロになるまで混ぜます。粉を少なめにしたり、水を加えたりしてトロトロの感じにこね上げます。
3) 一晩おいて、粉にしっかり水を含ませます。
<型に入れる>
4) 翌日練り加減をみて、必要なら水を足して、トロトロした状態にします。
5) 型に絞ったフキンを敷き、くるみを下に散らします。
6) 粉を型に流し込み、2時間ほど蒸します。
<取り出す>
7)熱いので気をつけて取り出し、布を濡らしながら、布をはがし、そのままラップに載せてくるみます。(耐熱温度の高い、厚手のラップを利用してください)
-昔はそのまま板の上で冷ました。
<食べる>
あつあつのくじら餅はめったに食べられません!
硬くなったものはオーブントースターで焼いたり、ラップをかけてレンジで温めてください。
分量 (9本分)
粉 :5升(もち米 8/ うるち 2)
黒砂糖:2400グラム
醤油 :300cc
水 :1400cc
くるみ:適量
もともと「うるかした」お米を粉にしていたので、粉の時点でだいぶ水分含量が増えています。
今は乾燥したお米のまま製粉してくれるところがあり、そこを利用するとだいぶ分量が変わってきます。その場合は水や砂糖の分量をそのままに、粉を2升半から3升分ぐらいでトロトロした感じまでいけると思います。