ポール・オースター(1/23)

 数年前に「ブルックリン・フォリーズ」に古本屋で出会い、それから何冊かオースターの作品を読んでみた。私にはブルックリン・フォーリーズの世界が一番読みやすかった。それは、主人公の設定されている年齢が近いせいか・・・登場人物のエピソードがそれぞれ受け入れやすく、小説として楽しむことができたせいだろうか。ちょっと今手元に本がないので、詳細には振り返れないのだが。
 それから、去年から、何冊か続けざまにオースターの初期の作品を読んでみたのだが、どうもしっくりこない。小説としての面白さにはまりきれないのだった。
 「幽霊たち」を読んで思ったのは、「あれ?安部公房?」という雰囲気だった。安部公房なんて何十年か前に読んだきりなのだけど、ブルーに、ブラックという名称の、不安定な存在の登場人物たち。生きること、書き続けることの不安と不安定感の中での生活が、次に読んだ「ガラスの街」にも染み出しているように思う。

 そして「偶然の音楽」と「ムーンパレス」と来て、破滅志向的な登場人物について行けなくなる。それは「ガラスの街」の後半の主人公の生き方が更にしつこく描き出されていると言えるだろう。突然、大金の手にした後、いつも破滅的な生活に向かっていくのが、どうしてもしっくりこない。そこに物語を生み出しているのかもしれないが、その生き方が肌になじんでこないのだろう。きっと「ブルックリン・フォーリーズ」の世界では、もう少し人生は落ち着いていた。みな、日々を生きる中で、様々な出来事があったとしても生きていた。
 しかし、この2作、どこかに向かっているように見えても、結局どこにも向かってはいないのではないだろうか。別に、小説の中で、正しい人生のあり方を指し示して頂く必要はないのだが、破綻していっても、とりあえず金があったから死ななかった人生。きっと破滅主義的な生き方のまま、どこからも救いの手はないままに、物語もなく死んでいく人たちはきっと数多くいることだろう。(2025/1/23)

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